私が行っている経営者向けのコーチングには、社長お一人と対話する形に加え、役員や経営幹部の方々にも、それぞれ1対1で関わる形があります。
「コンセンサスコーチング」と呼んでいる支援です。
2024年にサービスの内容を整理したときにも、私は、経営者個人への支援と、複数の経営層に関わることで組織へ働きかける支援を、分けて説明していました。
一人ひとりと話すことが、なぜ組織への支援になるのか。今回は、この関わり方について書いてみたいと思います。
一人の理解だけで、組織全体を描かない

経営者との対話では、その方が何を目指し、どのような課題を感じているかを深く聞いていきます。意思決定や、ご自身のリーダーシップを見つめるための、大切な時間です。
一方、会社は、その方一人の理解だけで動いているわけではありません。方針を受け取り、各部門の判断や行動につなげる人たちがいます。
私がコンセンサスコーチングで関わるのは、トップだけでなく、ナンバー2、ナンバー3といった経営のキーマンも含めた一人ひとりです。全員を一度に集めて話すことだけを、入口にしているわけではありません。
それぞれが何を大切にし、何を課題と捉え、どこに違和感を持っているか。その人の側から話を聞くことに、意味があると考えています。
社長には社長の立場から見えていることがあります。幹部には、任されている責任や現場との関わりから見えていることがあります。どちらか一人の説明で、もう一人の考えまで分かったことにはしない。その視点を持ちたいのです。
同じ言葉の先に、違う判断がある

ここからは、具体的に考えるための仮の場面です。
経営会議で「今期は、お客様との関係を大切にしよう」という方針を共有したとします。全員がうなずいていても、その言葉から考えている次の行動は、同じとは限りません。
ある人は、新しいお客様に会う機会を増やすことを考えているかもしれません。別の人は、既存のお客様への対応時間を増やすことを考えているかもしれません。
どちらも、お客様を大切にしたいと思っています。それでも、限られた人や時間をどこに使うかという判断では、違いが表れます。
このとき、先に必要なのは、どちらが方針を理解していないかを決めることでしょうか。むしろ、同じ言葉を、それぞれがどのような行動に置き換えているかを知ることではないかと思います。
「その方針を踏まえて、何を優先しようと考えていますか」。そこまで聞いて初めて、話し合うべき違いが見えてきます。
第三者が関わる意味を、情報の中継で終わらせない

プロコーチジャパンでは、複数の経営層に1対1のコーチングを行い、コンセンサスに関するフィードバックも行う支援として、このサービスを案内しています。
個人の課題を聞くだけでなく、経営チームとして認識を確かめる視点を持つことが、特徴の一つです。
ただし、それは個別の対話で聞いたことを、何でも別の人へ伝えてよい、という意味ではありません。個人の話を組織の話し合いにつなぐ際には、何を、誰と、どのように共有するかを確認することが欠かせません。
私がここでお伝えしたいのは、第三者が誰かの代わりに正解を決める、ということでもありません。
それぞれの見え方を踏まえて、本人たちが自分の理解を確かめ、必要な対話へ進めるようにする。目指しているのは、そのための関わりです。
誰の発言が正しいかだけを競うと、その発言の背景にある責任や懸念が見えなくなることがあります。違いを捉えることが、次の判断の材料になるようにしたいと考えています。
「伝えた方針」が、どう受け取られているか

組織への働きかけというと、大きな制度変更や全員参加の場を思い浮かべるかもしれません。私が複数の経営層との1対1を大切にしているのは、一人ひとりの理解に近づく入口になるからです。
全員の考えが完全に同じになるまで、決められないということではありません。役割が違えば、見えるものが違うのは自然です。その違いを知ったうえで、何を共通の判断として進めるかを考えることに意味があります。
まずは、いま大切にしている方針を一つ取り上げてみてください。その方針を、経営チームの一人ひとりは、どのような言葉で説明するでしょうか。そして、明日の仕事では、何を優先すると答えるでしょうか。
予想と違う答えが返ってきたときにも、すぐに訂正する前に、その人が何を見てそう考えたのかを聞いてみる。
そこには、こちらの伝え方を見直す手がかりも、自分がまだ捉えていない現場の事情も、あるかもしれません。
一人ひとりとの対話から、経営チームの理解を深めていく。それが、私がコンセンサスコーチングで大切にしている視点です。
経営チームの見え方の違いを話す
方針を伝えたつもりでも、幹部との間で受け取り方がずれていると感じることはありませんか。初回オリエンテーションで、その違いが表れた一件をお話しください。誰が正しいかを急いで決める前に、ご自身が何を伝え、何を確かめたいのかを見つめてみましょう。
経営の意思決定、リーダーシップ、組織や部下との関わりを相談したい方。 申込画面で選び直すこともできます。

