「あの人に頼めば、何とかしてくれる」

急ぎの仕事も、誰かが残した修正も、いつも同じ人へ集まっていく。頼まれた本人は、「大丈夫です」と引き受ける。表立った不満は出ていないので、上司もそのまま頼り続けてしまう。

けれど、その人の本来の仕事や、新しいことを学ぶ時間は、どうなっているでしょうか。

私は、社員にとって優しい会社を考えるとき、困っている人に手を差し伸べることと同じくらい、その支えを引き受けている人にも目を向けたいと思います。

誰かを助けた結果、別の誰かが、ずっと無理をしている。そんな状態を見過ごしてはいないでしょうか。

「今回だけ」が、いつもの役割になっていないか

たとえば、提出が遅れた資料を、別の社員が夜までかけて仕上げる場面を考えてみてください。一度きりの助け合いなら、チームの力として受け止められるでしょう。

しかし、同じことが繰り返され、依頼の仕方も進め方も変わらないままなら、どうでしょうか。

期日を守るために準備していた人ほど、あとから来た仕事を抱える。引き受ける人には感謝を伝えるけれど、負担を減らす話はしない。これでは、「きちんと取り組むほど、仕事が増える」という受け止めが生まれても不思議ではありません。

私が「優しい会社」と「甘い会社」を分けて考えたいのは、社員を大切にするという言葉の中で、責任や成長への関わりが曖昧になることがあるからです。

事情を聞くことは大切です。それと同時に、誰が何を引き受け、そのために何を後回しにしているかも、確かめる必要があると思います。

配慮することと、負担を見えなくすることを分ける

もちろん、全員へ同じ量の仕事を渡せば公平になるわけではありません。

経験や担当する役割、仕事を進められる時間は、それぞれ違います。慣れていない人に必要な支援もあれば、一時的に仕事を調整する必要もあるでしょう。配慮が必要な人を「甘えている」と決めつけることは、したくありません。

見直したいのは、その調整が、誰かの見えない頑張りだけで成り立っていないかということです。

たとえば、今週は担当を替えるなら、支える人の別の仕事を減らす。対応する範囲や優先順位を決める。引き継いだ仕事について、いつ元の担当や体制へ戻すかを確かめる。助け合いに必要な時間も、仕事として扱ってよいはずです。

個別の事情を、全員に詳しく説明する必要はありません。ただ、チームとして何を優先し、誰がどこまで担い、困ったときに誰が調整するかは、共有できるのではないでしょうか。

小さな不公平感が言葉にならず、組織の力を奪っていくことについては、組織のエネルギーを下げる、見えない「ノイズ」とはで考えました。ここでは、その違和感を、実際の仕事の配分まで戻して見直してみたいと思います。

組織のエネルギーを下げる、見えない「ノイズ」とはプロコーチジャパン · 読みもの


「誰が悪いか」の前に、次の分担を決める

最初の一歩として、最近「誰かが何とかしてくれた仕事」を一つ、振り返ってみてください。

本来の担当は誰で、実際には誰が引き受けたのか。追加でどのくらい時間が必要になり、何の仕事に影響したのか。「何となく大変そう」から、具体的な一件へ戻してみるのです。

そのうえで、本人たちと話すときには、過去の頑張りをねぎらうだけで終わらず、次の分担を決めます。

たとえば、「次回の資料は、まず担当者が構成まで作り、そこで一度確認する。支援する人は確認の一時間を担当し、遅れそうなら上司が優先順位を調整する」。これは一つの例ですが、どこまでが本人の役割で、どこからが支援かを分けると、助ける側も引き受けやすくなります。

本人が担う部分を残しながら、必要な支援をつくる。引き受けた人の負担も調整する。決めた分担で進められたか、あとで確かめる。

こうした関わりがあってこそ、責任と温かさが両立するのだと思います。「ありがとう」と伝えることに加えて、その人が無理を続けなくてよい状態まで考えたいのです。

あなたのチームで、いつも誰かが引き受けている仕事は何でしょうか。その人の善意に頼る以外に、次回はどんな分担を選べるでしょうか。

本記事は、山家正尚のFacebook投稿「優しい会社と甘い会社の違い」をもとに、仕事の分担の例と実践の問いを加えて再構成しています。

善意に頼りすぎない関わり方を考える

いつも同じ人に仕事が集まる、助けたいのに自分の負担も増えてしまう。あなたのチームで起きている一場面を、初回オリエンテーションでお聞かせください。責任と温かさを両立するために、ご自身がどんな関わりを選びたいかを考える入り口にしていただけます。

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