出社したのに、一日中オンライン会議だった。隣の席に同僚はいるけれど、ほとんど会話をせずに帰った。

そんな日が続くと、「何のために会社へ来たのだろう」と感じるかもしれません。

一方で、オンライン中心の働き方では、必要な報告は届いていても、誰が何に困っているのかが見えにくい。新人が、先輩の判断の仕方を知る機会が少ない。こうした戸惑いもあるのではないでしょうか。

私は、出社とリモート勤務を考えるとき、日数を決める前に置きたい問いがあります。

「私たちは、何をするために集まるのか?」

予定に入らない会話の中で、育つものがある

オンラインでのやり取りは、会議、報告、相談など、目的を決めて始めることが多いと思います。移動せずに話せることも、一人で集中する時間を取りやすいことも、大きな利点です。

一方、同じ場所で働いていると、予定にはなかったやり取りが生まれます。廊下ですれ違って「最近どう?」と聞く。会議が終わってから、少し話す。隣の部署の会話から、自分の仕事に関係することに気づく。

こうした時間は、すぐに成果として数えられないかもしれません。それでも、その中で相手への理解が深まり、相談しやすさや助け合う関係が育つことがあります。

私は、信頼や一体感、暗黙知、仕事に対する基準といったものを、「目に見えない経営資産」と捉えています。

「目に見えない経営資産」とは何かという記事では、日々の判断や関わりが組織を支えるという視点を書きました。働く場所を考えるときにも、この資産をどう育てるかという問いが必要だと思うのです。

「目に見えない経営資産」とは何かプロコーチジャパン · 読みもの


マニュアルの外にある、仕事の基準を受け取る

たとえば、新入社員が先輩の仕事を横で見ている場面を思い浮かべてください。

お客様にどのような声で話しかけるのか。トラブルが起きたとき、何を先に確かめるのか。どの段階で上司に相談し、どこまで自分で考えるのか。

手順書に書かれた結論だけでなく、判断までの過程に触れることで、「この会社では、ここを大切にするのだ」という基準を受け取っていきます。

また、管理職にとっても、表情や声、会話量の変化は、相手を理解する手掛かりになります。「今日は元気がないように見える」「最近、会話が減った気がする」。報告書とは別のところから、気になることが見つかるのです。

ただし、感じ取ったことを、そのまま事実と決めつけないことも大切です。「何か困っていることはありますか」と本人に確かめる。気づきは、相手を評価する結論ではなく、対話の入口にしたいと思います。

同じ空間にいることには、こうした情報に触れやすい面があります。しかし、ただ席を並べれば信頼が生まれるわけではありません。声をかける余裕がなく、話しても否定されるなら、出社していても関係は育ちにくいでしょう。

出社日数の前に、集まって何を育てるかを決める

一人で資料をまとめる時間と、先輩の判断を学ぶ時間。定型的な報告と、まだ答えのない課題を一緒に考える時間。必要な関わり方は、それぞれ違います。

だから、すべてを一つの働き方にそろえる前に、今のチームに何が足りていないのかを確かめてみてほしいのです。

たとえば、新人が判断に迷っているなら、出社日にただ同じ仕事をするだけでなく、一つの対応を先輩と一緒に振り返る時間をつくる。「なぜ、あの順番で確認したのですか」と聞ける場があれば、仕事の基準を言葉にできます。

部署を越えた相談が少ないなら、進捗報告を増やす前に、互いが抱えている困りごとを話せる時間をつくる。こうした工夫は、オンラインでも取り入れられます。対面で集まることが難しい人も参加できる形を考えることが大切です。

まず、次に集まる機会について、三つの問いを置いてみてください。

  • その時間で、誰と誰の間に、何を育てたいか。

  • 普段の報告や資料共有だけでは、何が伝わっていないか。

  • そのために、どんな会話や共同作業の時間を用意するか。

たとえば「新人が、困ったときに誰へ相談できるか分かるようにする」と決めると、席にいる時間を数えるだけでは見えなかった、集まる意味が具体的になります。

出社すること自体を目的にせず、人と人の間に何が生まれたかを見る。効率よく仕事を進めることと、信頼や文化を育てること。その両方を考えながら、働き方を選んでいきたいと思います。

次にチームで集まる時間を、何を育てる時間にしたいですか。

本記事は、山家正尚のFacebook投稿(10月2日)をもとに、具体例と実践の問いを加えて再構成しています。