予定どおりに納品できた。難しい提案が受け入れられた。新しい取り組みに、よい反応があった。

仕事がうまくいくと、ほっとします。「皆さん、お疲れさまでした」と区切りをつけ、すぐ次の仕事へ向かうこともあるでしょう。

一方、失敗した仕事には、原因を調べ、再発を防ぐ時間を設けます。この違いを考えると、成功した仕事からは、十分に学ばないまま通り過ぎているのかもしれません。

成果を喜ぶことと、成果が生まれた過程を知ることは、別の営みです。今回は「うまくいった仕事」を、次にも使える経験へ変える振り返りを考えてみます。

「よかったこと」より、起きていたことをたどる

「今回、何がよかったですか」と尋ねると、「連携がよかった」「みんなが頑張った」という言葉が出るかもしれません。

その実感は大切です。ただ、そのままでは次に何をすればよいかが分かりません。連携とは、具体的にどの場面で、誰が何をしたことだったのでしょうか。

たとえば、提案が受け入れられた場面を振り返るなら、提出した資料だけでなく、その前のやり取りへ戻ってみます。最初に相談を受けたとき、何を確かめたか。途中でどの情報を共有したか。相手の反応を受けて何を変えたか。

時間の順に並べると、印象に残った最後の場面以外にも、成果を支えた行動が見えてきます。

「あの確認があったので、後の修正を減らせた」という発見は、「よいチームだった」という感想より、次の仕事へ持ち込みやすいものです。大きな成功の理由を一つに決めるより、小さな行動を具体的に拾っていきます。

自分たちの工夫と、助けられた条件を分ける

結果がよいと、行ったことのすべてが正しかったように感じることがあります。

しかし、今回の成果には、相手の事情や時期、偶然の助けも関わっていたかもしれません。逆に、結果はよくても、担当者が無理を重ねて支えていた可能性もあります。

先ほどの提案が通った理由も、要望を早く確かめた工夫だけとは限りません。相手に急な予算の余裕が生まれていたのかもしれません。こちらの工夫と相手の事情を分ければ、次にも試せることが見えやすくなります。

自分たちで選んだ行動。周囲から受けた支援。今回だけの条件。このように分けて眺めてみてください。

一度の経験だけで、何が成果の原因だったかを断定する必要はありません。「この確認が役立った可能性がある」「今回は相手の協力が大きかった」と、分かった範囲を丁寧に言葉にします。

成功を、自分たちの能力だけで説明しないことは、成果を小さく扱うことではありません。次の仕事でも無理なく力を発揮するために、必要な条件を正確に知ろうとする姿勢です。

称賛のあとに、工夫を本人の言葉で聞く

振り返りをするとき、周囲が理由を決めてしまうことがあります。

「あなたは調整が得意だから、うまくいったのですね」とまとめれば、本人が実際に工夫したことは見えないままです。得意な人に任せればよい、という結論にもなりかねません。

「最初の段階で、どこを気にかけていましたか」「途中で進め方を変えたのは、何を見たからですか」と聞いてみると、本人にもまだ言葉になっていなかった判断が見つかることがあります。

話す側は、立派な教訓にまとめなくても構いません。「いつもより早く確認した」「迷ったので一度見せた」といった小さな工夫で十分です。

また、表に出た担当者だけでなく、情報を揃えた人や、先に負担を引き受けた人の動きもたどってみます。本人の成功談を聞く時間であると同時に、仕事がどのような支えで成り立っていたかを知る時間にします。

ここで拾った工夫を、その人だけの秘密にしない。かといって、本人の働き方をそのまま全員へ要求しない。その間に、組織として学べる部分があります。

次に持ち込むのは、手順全部ではなく一つの仮説

振り返りの最後に、成功した手順を丸ごと標準化しようとすると、仕事が重くなることがあります。

まずは、次にも試す価値がありそうな工夫を一つ選んでみてはいかがでしょうか。

たとえば、「着手前に、依頼者と完成のイメージを一度確認する」。次の案件でも試し、手戻りはどうだったか、確認の負担は大きすぎなかったかを見ます。場面が違えば、その工夫が役立たないこともあるでしょう。それも、適用できる条件を知る材料になります。

記録には、役立ったと考える行動に加え、次に誰が、どの仕事で試すかを短く残します。たとえば「次の提案では、構成をつくる前に依頼者と完成のイメージを確認する。提出後に、修正の往復と確認にかかった時間を振り返る」。試す場面と確かめ方まで決めておけば、感想で終わりにくくなります。

成功の振り返りは、過去をほめるためだけにあるのではありません。成果の手前で起きていたことを見つけ、未来の選択肢を増やすためにあります。

最近うまくいった仕事を一つ思い出してみてください。次の仕事にも持っていきたいのは、どのような小さな工夫でしょうか。

うまくいった経験を、次の仕事へ

最近うまくいった仕事を一つ、初回オリエンテーションでお聞かせください。ご自身の工夫と、周囲に助けられた条件をたどることは、次に何を試したいかを考える材料になります。成功の手順をそのまま繰り返す前に、経験を言葉にする対話を体験してみてください。

このテーマからのご相談経営者・管理職向け

経営の意思決定、リーダーシップ、組織や部下との関わりを相談したい方。 申込画面で選び直すこともできます。

初回オリエンテーションへ

オンライン・60分。プログラムの一部を体験いただけます。