会議で問題点を指摘した。間違ったことは言っていない。それなのに、相手の言葉が少なくなり、その後の相談も来なくなる。
そんな場面では、「伝えた内容は正しかったか」に加えて、「相手が次も話せる関わり方だったか」を振り返る必要があるのかもしれません。
私は、仕事ができることと、一緒に仕事をしたいと思われることは、同じではないと考えています。
知識が豊富で、判断が速く、成果も出す。一方で、口調が強かったり、相手を見下すような言い方になったりすると、周囲は相談をためらうことがあります。本人に悪気があるかどうかとは別に、関わり方の影響は残ります。
自分の成果だけでは見えない、周囲への影響
相談をためらう人が増えると、何が起きるでしょうか。
小さな問題が共有されない。まだ形になっていないアイデアが口にされない。本人が知らないところで、必要な対話が止まってしまうかもしれません。
自分自身は成果を上げていても、その関わり方によって、周囲が力を発揮する機会を減らしている可能性があります。
だから私は、専門性や判断力だけでなく、相手の力を引き出しながら、組織全体で成果を生み出す力も大切だと思っています。
これは、いつでも相手に合わせるということではありません。仕事の基準は伝える。必要な指摘もする。そのうえで、相手の考えが届く余地を残すということです。
「ハーモニー」は、全員が同じ意見になることではない

私は、会社には「ハーモニーを奏でる力」が必要だと考えています。
楽器には、それぞれ違う音色があります。その違いがあるからこそ、音楽は豊かになります。ただ、自分の音だけを大きく響かせ、周囲の音に耳を傾けなければ、合奏は成り立ちません。
組織も同じです。調和とは、全員が同じ意見になることではありません。異なる意見も率直に伝えながら、お互いが力を発揮できる関係をつくることです。
たとえば、提案に無理があると感じたとき。「それでは無理です」と結論だけを返すのではなく、「この期限だと、この工程が間に合わないと考えています。どのように進める想定でしたか」と、自分の懸念を具体的に伝え、相手の考えも確かめる。
答えを曖昧にする必要はありません。採用できない案なら、その理由を伝える。その過程で、まだ聞いていなかった事情や、自分が見落としていた可能性を受け取れる関係を保ちたいのです。
相手への配慮と、仕事への率直さ。この二つは両立します。意見の違いを言える環境については、「心理的安全性は『優しさ』だけではない」でも考えています。

次のやり取りで、相手が話せる余白をつくる
オンラインでの仕事は便利です。一方、短いチャットや画面越しのやり取りだけでは、相手の表情や声の変化、その場の空気を十分に受け取れないこともあります。
「今は少し声をかけないほうがよい」「この伝え方なら、受け止めやすい」「ここは、まず話を聞いたほうがよい」。そうした肌感覚やさじ加減は、日頃から相手を観察し、関わり、信頼を築く中で育っていくものだと思います。
ただ、相手の気持ちを察したつもりで決めつけないことも大切です。表情が見えないなら、「この説明で気になる点はありますか」と言葉で確かめる。短いやり取りで食い違いが続くなら、話す時間をつくる。関わり方を選び直すことはできます。
最近の一つの会議や相談を思い出して、次の問いを置いてみてください。
相手が話し終える前に、自分の結論を伝えていなかったか。
何を直してほしいのか、相手が分かる言葉になっていたか。
自分の意見を伝えたあと、相手の考えを聞いただろうか。
全部を一度に変える必要はありません。次のやり取りで、相手の話を最後まで聞く。指摘するときに、理由を一つ具体的に添える。そのような一歩から始められます。
自分の能力を高めること。そして、その能力を周囲との関係の中で生かすこと。
自分だけが成果を出すのではなく、周囲の人も力を発揮できる。そんなハーモニーを、日々の関わりから育てていきたいですね。
あなたの言葉のあとに、相手がもう一言話せる余白はあるでしょうか。
本記事は、山家正尚のFacebook投稿をもとに、具体例と問いを加えて再構成しています。

