昇進したとき、新しい役割を任されたとき。あるいは、長く担ってきた役割を誰かへ渡すとき。
仕事上の変化は、予定や責任だけでなく、自分の見え方にも影響します。
以前なら自分へ来ていた相談が、別の人へ向かう。決める側から支える側へ変わる。肩書は立派になったのに、これまでのような手応えが得られない。
そのようなとき、「自分の価値まで変わってしまった」と感じることがあるかもしれません。仕事で求められる役割や評価が変わることと、一人の人として大切にされることは、分けて考えたいものです。そのうえで、新しい立場での関わり方を探してみたいと思います。
役割が変われば、失うものもある

「肩書にこだわらなくてよい」と言われても、簡単に割り切れるとは限りません。
役職には、裁量や責任だけでなく、居場所や日々の関係が結びついています。長く努力して得てきたものなら、変化に戸惑うのは不思議なことではありません。
また、役割の変更によって、実際に使える権限や働く条件が変わる場合もあります。そうした現実の問題まで、気持ちの持ち方だけで片づけないことが大切です。
まずは、何が変わったのかを具体的に見ます。決められる範囲なのか、関わる人なのか、評価のされ方なのか。前の役割で何を大切にしていたのかも、確かめてみます。
「自分には何もなくなった」という大きな言葉を、そのまま結論にしない。変わったものを丁寧に見れば、まだ残っているものや、確認すべき条件も見えやすくなります。
役割への思いを無理に捨てることから始めなくてもよいのです。
肩書ではなく、してきたことを言葉にする

「部長として何をしてきましたか」と聞かれると、管理していた人数や担当範囲が思い浮かぶかもしれません。
もう少し具体的に、日々の行動へ目を向けてみます。
複雑な相談を整理していた。お客様が困っていることを早く見つけていた。意見が分かれた場面で、論点を分かりやすくしていた。新しい担当者が仕事を始めやすいよう、情報を揃えていた。
そうした働きは、肩書だけで生まれていたわけではないでしょう。経験を通じて身につけてきた力や、誰かに向けていた関心が、そこにあります。
もちろん、以前の権限がなければ、そのまま使えない方法もあります。だからこそ、役職名から一度離れて、「誰に、どのような助けを届けていたか」と言い直してみます。
自分では当たり前だと思っていた働きが、別の役割でも役立つと気づくことがあります。過去の地位を証明するためではなく、これから持っていけるものを知るために、経験を振り返るのです。
以前の役割を、そのまま再現しなくてよい

新しい立場でも、以前のように頼られようとすると、必要以上に仕事へ入り込んでしまうことがあります。
求められていない判断を先にする。新しい責任者が考える前に、答えを伝える。善意であっても、現在その役割を担う人の余地を狭めるかもしれません。
自分の経験を使うことと、以前の役割を続けることは、別です。
新しい場面では、「いまの私に、どのような関わり方が役立ちますか」と確かめてみてください。前に出て決めるより、資料を整理することや、相談されたときに背景を伝えることが役立つ場合もあります。
反対に、昇進した人が以前の担当業務を抱え続けているなら、新しい役割で何を期待されているかを確認する必要があるでしょう。
かつての手応えと同じものを、同じ方法で得ようとしなくても構いません。役立ち方が変わることを、価値が減ることと同一視しない。その視点が、新しい関わりを探す余地になります。
小さな貢献から、新しい手応えをつくる

次の自分を、すぐに立派な言葉で定義する必要はありません。戸惑いが残っているうちから、新しい役割で成果を出して自分の価値を証明しようと、急がなくてもよいのです。
まずは、目の前の仕事で、自分の経験が役立つ場面を一つ見つけてみます。新しい担当者が理解しづらい資料を整理する。別の部署の相談に、求められた範囲で知識を渡す。これまでとは違う仕事を学ぶ側に回る。
試したあとには、相手にとって役立ったか、自分はどの部分に手応えを感じたかを確かめます。過去の自分と比べて大きい仕事かどうかより、現在の関係の中で意味があったかを見ます。
また、人としての価値を、仕事で役に立てたかだけで測り続ける必要もありません。仕事以外の関係や時間も、自分の生活を支えています。役職が変わるときには、そちらへ目を向ける機会を持つこともできるでしょう。
役割は、自分が世界と関わる一つの形です。大切なものですが、自分のすべてではありません。
いまの肩書を使わずに、あなたが大切にしてきた働きや関わりを説明するとしたら、どのような言葉になるでしょうか。その言葉は、次の役割へ持っていけるものかもしれません。
肩書の変化と、自分の価値を分けて考える
新しい役割を担うとき、長く担った仕事を手放すとき、気持ちが揺れることもあるでしょう。初回オリエンテーションでは、変わることへの思いや、これまで大切にしてきた関わりをお話しください。肩書だけでは表せないご自身の働きと、これからの選択を見つめる時間にしていただけます。
自分の価値観、習慣、生き方や人生の方向性を見つめたい方。 申込画面で選び直すこともできます。

