「生身のコーチとAIコーチの違いは何ですか?」

そう聞かれて、ふと思ったことがあります。それは、「今、この瞬間に感じているものを、どこまで対話に持ち込めるか」ということです。

AIに話して、考えが整理された。自分では思いつかなかった問いをもらえた。それでも、人と話す時間に、何か違うものを求めている。その違いは、どこにあるのでしょうか。

私はこの問いを、人のコーチとして日々どのように相手と向き合うのか、という問いとして受け止めています。

AIに相談できることが増える中で

AIは、与えられた情報や、利用できる過去のやり取りを手がかりに、考えを整理したり、別の視点から問いを返したりできます。

「この人なら、こう考えるかもしれない」「この問いが、新しい気づきにつながるかもしれない」。そうした応答の可能性は、これからも広がっていくのでしょう。

なお、AIが扱う情報は、文字だけではありません。音声や画像を扱うAIもあります。たとえばOpenAIは、音声・画像・テキストを横断して処理するモデルを公開しています。そのため、声や表情に関わる情報を扱うこと自体を、人間だけの能力と決めつけることはできません。

そのうえで、私が自分のコーチングを振り返ったときに大切だと感じるのは、目の前の人と関わる中で、自分自身に何が生まれているかということです。

声のトーン。言葉と言葉の間。表情。呼吸。その場の雰囲気。そして、説明することが難しい「何となく感じるもの」。私は、話の内容とともに、そうしたものも受け取りながら対話しています。

話と関係のなさそうなイメージが浮かぶとき

私自身、コーチングをしていると、クライアントは「A」という話をしているのに、なぜか私の中には、まったく関係のなさそうな「X」というイメージが浮かんでくることがあります。

そんなとき、こう伝えることがあります。

「今、なぜかわからないのですが、こんなイメージが浮かんできました」

すると、その一言から、それまでとはまったく違う対話が始まることがあります。論理的に考えて、順番に組み立てて出てきた言葉ではありません。

直感。ひらめき。虫の知らせ。肌感覚。

こうした、人間が本来持っている感覚も、コーチングにおいては大切な情報なのではないかと思っています。

ここでお伝えしているのは、相手についての結論ではなく、「今、私に浮かんできたもの」です。それをきっかけに、相手が何を感じ、どのような言葉を返してくれるのか。そこから対話が動き出すところに、私は大切なものを感じています。

相談する側にとっても、最初から自分の気持ちをすべて説明できるとは限りません。話しながら言葉を探す時間や、思いがけない一言から別の話を始める時間。その余地を持てることにも、人と対話する意味があるのではないでしょうか。

感覚を澄ませるために、コーチ自身を整える

だからこそ、これからの時代、生身のコーチに必要なのは、AIと知識量や分析力で競うことだけではないのかもしれません。

自分自身の感覚を、どれだけ澄ませておけるか。

雑多な情報に埋もれすぎず、心を穏やかに保つ。静かな状態の中で生まれてくる微細な感覚を、どれだけキャッチできるか。目の前の人に向き合うために、コーチ自身を整えておくことが、これまで以上に問われると思います。

私は、そのことを「人間としての品と質を高め続けること」とも捉えています。

以前、AI時代に考える、人の「品」と「質」という記事で、「品」は日々の関わり方に、「質」は仕事で価値を生む力に表れると書きました。コーチにも、相手を尊重して聴く姿勢と、学びや実践を重ねて対話の質を高めることの両方が必要なのだと思います。

AI時代に考える、人の「品」と「質」プロコーチジャパン · 読みもの

穏やかにいることも、直感を大切にすることも、知識や技術を磨かなくてよいという話ではありません。自分を整えながら、相手との関わりの中で何が起きているかに注意を向け続ける。その積み重ねを大切にしたいのです。

あなたは、相談相手にどんな関わりを求めるか

もちろん、もう一つの側面もあります。クライアントが、そこまでの関わりを求めるのか、ということです。

一般的な相談や、思考整理、目標設定、振り返りなど、多くのテーマでは、AIとの対話で必要なことが満たされる場面も増えていくと私は考えています。その領域では、AIの方が便利だと感じる人もいるでしょう。

一方で、考えを整理するだけでなく、まだ言葉にならない感覚も含めて、人と一緒に確かめたいときがあるかもしれません。

相談先に迷ったら、まず「今、自分は何を求めているのか」と問いかけてみる。考えをまとめたいのか。次にすることを決めたいのか。それとも、話しながら自分でもまだわからないものに触れてみたいのか。その違いによって、求める関わりも変わってくると思います。

AIや、現実の世界で動くフィジカルAIが発展する中で、コーチングの仕事も変わっていくでしょう。だからこそ私は、生身のコーチとして何を磨き続けるのかを、自分に問い続けたいのです。

自分自身を整え、感覚を澄ませ、直感やひらめきの質を高めながら、目の前の人と「今、この瞬間」に存在する。そんな関わりを求める人がいる限り、生身のコーチだからこそできる仕事は残るのではないか。私は、そう考えています。

あなたが今、誰かに相談するとしたら、どんな関わりを求めているでしょうか。

あなたが求めるコーチとの関わりを確かめる

考えを整理したいのか、次の行動を決めたいのか、まだ言葉にならない感覚を誰かと確かめたいのか。初回オリエンテーションで、いま求めている関わりをお聞かせください。人と対話する時間がご自身にどう響くか、プログラムの一部を通じて確かめていただけます。

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