任せてもらえる仕事が増えた。家族にも心配をかけず、周りからは順調に見えている。それでも、次に何をしたいかと聞かれると、うまく答えられない。
何が求められているかなら、わかる。期待に応える方法も、身につけてきた。でも、自分はどう生きたいのか。その話になると、急に言葉が出てこなくなる。
そんなとき、すぐに大きな目標を作る必要はありません。仕事・人間関係・毎日の過ごし方を見直す12の視点の中から今回は、期待に応えるだけでは決められない、自分の喜びを考えます。

人の期待は道案内になるけれど、行き先のすべてではない

期待されることは、うれしいものです。信頼され、役に立てることが、自分の喜びになる場合もあります。周りに応えてきた時間を、間違いだったと否定する必要はありません。
ただ、選択の理由がいつも「そのほうが喜ばれるから」だけになっていると、自分がどんな経験を望んでいるかが、置き去りになることがあります。
たとえば、説明が上手だから管理職を勧められた人がいるとします。その人が喜びを感じているのは、人を評価することより、相手の理解が進む瞬間に立ち会うことかもしれません。管理職になる道でも、その喜びを大切にできる場合はあります。でも、昇進そのものが答えだとは限りません。
他人から見た適性と、本人が深く充実する生き方には、重なる部分も、違う部分もあります。周りの見立ては大切な手がかりであって、自分の望みの代わりではないのです。
喜びは、楽しい作業だけのことではない

「自分の喜びを大切に」と言われると、好きなことだけをして暮らす姿を思い浮かべるかもしれません。けれど、深く満たされる経験には、手間や難しさが含まれることもあります。
たとえば、人に何かを伝えることに喜びを感じる人でも、説明を考え直す作業は楽ではありません。相手に届かず、もどかしい日もあるでしょう。それでも、相手が自分の言葉で理解を話し始めると、その時間に立ち会えてよかったと思える。
その喜びは、苦労がなかったこととは違います。自分にとって意味のある関わり方をしている、という実感に近いものです。
もちろん、つらさがあるほど本物だということでもありません。我慢を続ける理由に喜びを持ち出す必要はないのです。楽か苦しいかという一つの尺度だけでは、その人が生きたいあり方を捉えきれない、という話です。
自分の喜びを考えることは、快適な作業を探すことにとどまりません。どんなふうに生き、関わると、自分の時間が自分のものだと感じられるかを考えることです。
自分が満たされることと、人の役に立つことはつながり得る

自分の喜びを優先したら、周りへの貢献が小さくなるのではないか。そんな心配もあるかもしれません。
でも、相手の理解が進むことを喜ぶ人は、求められたから仕方なく説明するだけでなく、どうすれば伝わるかに自然と関心を向けます。本人の喜びが、人との関わりに表れることがあるのです。
ここでいう貢献は、いつでも無料で引き受けたり、自分を後回しにしたりすることではありません。自分を削り続けなければできない関わり方と、自分の充実が周りにも届く関わり方は、分けて考えたいものです。
また、喜びがあるからといって、相手にも必ず役立つとは限りません。教えることが好きでも、相手が今は一人で考えたい場合があります。自分の思いと、相手の望みが出会うところに、実際の関わりが生まれます。
これは、職業名や性格分類だけで自分を説明するよりも広い、生き方についての見方です。一つの仕事だけが、喜びを表せる唯一の場所とは限りません。家庭や地域、友人との時間に表れる場合もあります。
喜びが見え始めても、人生を急いで変えなくていい

自分にとって大切なものが少し見えたからといって、すぐに仕事を辞めたり、周りとの約束を変えたりする必要はありません。急いで形にすると、今度は「これが本当の自分のはずだ」という期待に縛られることもあります。
自分の喜びは、立派な言葉にまとめた瞬間に完成するものではないでしょう。実際の暮らしの中で、その関わり方をどう大切にできるかを考え続けられます。
その際には、自分の納得だけでなく、実際の選択が周囲にどう届き、無理なく続くかも一緒に見ていきたいところです。望みと責任を、どちらか一方にしなくてよいのです。

期待される自分を上手に続けることだけが、生き方の選択肢ではありません。自分が深く喜ぶあり方から、これからの関わり方を考えることもできます。
まだ答えが言葉にならなくても、その問いを人の期待で埋めずに持っていてよい。自分の喜びにも、これからを決める席を用意してよいのだと思います。
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