決断が速い。細部によく気づく。人の役に立とうと動ける。

これまで仕事を支えてきた自分の強みが、ある場面では、周囲とのかみ合わなさにつながることがあります。

決めるのが速い人が、まだ材料を集めている人の考える時間を短くしてしまう。丁寧な人が、まず試す段階でも完成度を求めてしまう。助けるのが得意な人が、相手の仕事まで抱えてしまう。

だからといって、その強みが悪いわけではありません。大切なのは、持っている力を、どの場面で、どれくらい使うかです。

頼られてきた方法ほど、自然に出てくる

うまくいった経験のある方法は、次の仕事でも選びやすくなります。

周囲から「判断が速くて助かる」と言われてきたなら、迷いがある場面で結論を出そうとするでしょう。「よく気がつく」と頼られてきたなら、細かな不備を先に見つけるかもしれません。

それは、その人が磨いてきた力です。一方、いつも同じ方法を選ぶようになると、場面に必要なことより、自分が得意なことを優先している場合があります。

たとえば、緊急の対応では速い判断が役立ちます。しかし、新しい事業の可能性を広げる打ち合わせで、最初から案を絞り込めば、まだ形になっていない発想は残りにくくなります。

強みがあるかどうかだけでなく、いま何をする時間なのかを見る。自分の得意な方法から始める前に、仕事の段階を確かめる余地を持ちたいものです。

性格の評価ではなく、行動の影響を観察する

「自分はせっかちだから」「私は細かい人間だから」と性格で説明すると、変えられないもののように感じてしまいます。

ここでは、少し小さく、実際の行動として見てみましょう。

会議のどの時点で結論を出したのか。資料のどこを、何度確認したのか。頼まれる前に、どの仕事を引き取ったのか。

行動が具体的になると、周囲への影響も確かめやすくなります。早く決めたことで助かったことと、考える余地がなくなったこと。その両方があっても構いません。

周囲に聞く場合も、「私の短所は何ですか」という大きな質問ではなく、「先ほど結論を出したタイミングは、進めやすかったですか。もう少し考える時間が必要でしたか」と、場面を絞ります。

相手の返答は、その人から見えた一つの情報です。すべてを自己評価に直結させる必要はありません。ただ、自分が意図したことと、実際に起きたことの違いを知る材料にはなります。

強みを否定するのではなく、その届き方を観察するのです。

反対の人になるのではなく、使う幅を広げる

強みの使い方を変えるというと、正反対の性格にならなければいけないように感じるかもしれません。

しかし、決断の速い人が、いつも慎重になる必要はありません。必要な場面で、結論を少し待てればよいのです。

たとえば、次の企画会議では最初の十分間だけ、採用するかどうかを決めずに案を集める。丁寧さが強みの人なら、試作品では「今回確かめたい一点」に関係しない修正を保留する。人を助けるのが得意な人なら、引き取る前に「どこまで自分で進めたいですか」と聞く。

一度に大きく変えるより、場面を一つ選び、普段と少し違う行動を試します。企画会議なら、結論を待ったことで新しい案が出たか、必要な時刻までに決められたかを振り返る。「我慢できたか」ではなく、仕事や周囲に何が起きたかで、使い方を確かめます。

その結果、仕事が進みにくくなることもあるでしょう。その場合は、元へ戻すか、待つ時間や確認の範囲を調整すればよいのです。別の方法を一度試したからといって、これまでの自分を否定したことにはなりません。

選べる方法が一つ増える。それを成長として捉えてみてはいかがでしょうか。
人を助けようとして仕事を引き取りすぎる場面については、「任せた仕事を、途中で取り戻していませんか」で、支援と介入の境界を具体的に考えています。

任せた仕事を、途中で取り戻していませんかプロコーチジャパン · 読みもの


強みを出さない選択も、力の使い方になる

リーダーには、自分の力を発揮するだけでなく、ほかの人が力を発揮できるように関わる役割もあります。

自分がまとめる前に、別の人に整理してもらう。自分が気づいた不備を指摘する前に、担当者が何を確認しているかを聞く。そうすることで、相手の判断や工夫が表に出る場合があります。

これは、力を隠すことでも、遠慮して責任を避けることでもありません。仕事の目的に照らして、いま自分の力をどのように使うかを選ぶことです。

必要な場面では十分に発揮する。別の力が必要な場面では、他の人の力を借りる。自分の強みを持ちながら、それだけに頼らない。そんな柔軟さがあれば、役割や環境が変わったときにも、新しい働き方を試しやすくなるでしょう。

「自分らしさ」を守ることと、同じ行動を続けることは、必ずしも同じではありません。

あなたがこれまで頼りにしてきた強みは何でしょうか。そして次の仕事では、その強みを、いつもより少し控えたり、違う形で使ったりできる場面があるでしょうか。

強みの使い方に、幅を持たせる

これまで自分を支えてきたやり方が、今の相手や役割には合わないと感じることがあります。初回オリエンテーションで、その具体的な場面をお聞かせください。強みを否定するのではなく、どんな影響が出ていて、どんな使い方を選びたいかを話してみませんか。

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