朝から連絡に返事をし、頼まれた資料を作り、会議に出る。夕方にはやることがいくつも片づいている。それなのに、「今日は何をしたかったんだろう」と、少し空っぽな気持ちになる。

仕事をしていないわけではありません。むしろ、周りには助かったと言われる。足りないのは作業量ではなく、その一日の中に自分の思いが見えないことかもしれません。

仕事や人間関係、毎日の過ごし方を見直す12の視点の出発点として、今回は「何を大切に働くか」を、自分の言葉で持つことを考えます。

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求められたことと、自分が大切にしたいこと

仕事には、依頼や目標、守るべき約束があります。自分の思いを持つことは、それらを無視して好きに動くことではありません。

同じ資料作成でも、「指定された項目を全部埋める」と捉える人と、「この資料を読む人が、迷わず判断できるようにする」と捉える人では、気になるところが変わります。後者なら、数字が揃っていても、何を判断してほしいのかが見えなければ、説明を足したくなるでしょう。

どちらも依頼された仕事をしています。違いは、その仕事に自分がどんな意味を持たせているかです。

求められたことに応える中にも、自分が大切にしたいことを表す余地があります。

大きな夢や、誰もが感心する使命でなくてかまいません。「わからないまま取り残される人をつくらない」「約束できないことは、曖昧に引き受けない」。そんな思いも、毎日の仕事のあり方になります。

思いは、言葉や選び方に表れる

心の中で「相手を大切にしたい」と思っていても、忙しいときに説明を省けば、その思いは相手に伝わりにくくなります。逆に、短いやり取りでも、相手が困っている点を確かめる言葉があれば、関わり方は変わります。

ここでいう思いは、願えば結果が変わるという話ではありません。何を大切にするかが、何を言い、何を選ぶかに表れていくという、生き方の話です。

たとえば会議を早く終わらせたいとき。「結論はこれでいいですね」と確認するのか、「まだ決める材料が足りない点はありますか」と尋ねるのか。その一言にも、その場で何を大切にしているかが現れます。

いつも理想どおりに言えるわけではありません。それでも、自分の思いが見えていれば、「今日は急ぐことを優先しすぎた」と具体的に振り返れます。単に「うまくできなかった」で終わらず、どんな関わり方に戻りたいのかがわかるのです。

思いを持つことは、自分に新しい合格点を課すことではありません。日々の選択を、人の反応だけで決めないための出発点になります。

忙しさを減らしても、選ぶ理由がなければ同じことが起きる


作業を効率よく済ませ、時間が空いたとします。でも、自分が何を大切にしたいかが見えないままだと、その時間は次に頼まれたことで埋まるかもしれません。

効率を上げることには意味があります。ただ、それだけでは、空いた時間を何に使いたいかまでは決まりません。

反対に、「後輩が一人で判断できるように関わりたい」という思いがあれば、自分が代わりに片づけたほうが早い場面でも、説明を聞く時間に意味を感じられます。目先の速さだけで測れば遠回りでも、自分が望む仕事には近づいているかもしれません。

もちろん、組織の方針や権限によって、選べる範囲は違います。自分の意思だけですべてを変えられるわけではありません。思いと現実が合わないとき、その違いを言葉にして相談することも、自分の思いを扱う一つの形です。

何でも自分次第と考えるより、今どこに選択の余地があり、どこは周囲と考える必要があるのか。その区別があるほうが、思いを現実の中で大切にしやすくなります。

自分の思いがわからないときも、急いで借り物にしない

長く期待に応えてきた人ほど、「自分はどうしたいか」がすぐには出てこないことがあります。そこで、もっともらしい目標を置けば安心できるかもしれません。でも、言葉が立派でも、自分の実感が伴わなければ、また誰かの正解をこなす仕事になります。

今の時点では、「ただ急いで終わらせる働き方にはしたくない」くらいの言葉でもよいのです。まだ形にならない思いを、なかったことにしなくてよい。

その先で、人の期待だけでなく、自分の喜びから生き方を考えるという視点が役立つことがあります。何を望むかを深めることと、望みを持ってよいと認めることは、つながっています。

人の期待で選んできた人が、自分の喜びから生き方を考え直すプロコーチジャパン · 読みもの

一日の価値は、いくつ片づけたかだけでは決まりません。その中で、自分が大切にしたいことをどう表せたか、という見方もあります。

明日も同じ仕事が続くとしても、そこに持っていく思いは、自分で考えられます。仕事の名前を変えなくても、働く自分がいつも不在である必要はないのです。

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自分が大切にしたいことを、働き方と生き方につなげる