試合への出場が決まっていない。それでも、出場するときのために準備を続ける。

総合格闘家の大山峻護さんとの関わりには、今も私の中に残っている場面があります。対戦が決まったあとではなく、まだ決まっていない時間に、彼がどう過ごしていたかということです。

今回は、以前「Yamaya’s Radio」で紹介した大山さんの事例を、「機会が来る前の準備」という視点から振り返ってみたいと思います。

まだ決まっていない舞台を、目標にしていた

私が大山さんとメンタルコーチング契約を結んだのは、2005年です。

彼が目標にしていたのは、年末の「Dynamite!!」でピーター・アーツ選手と対戦し、勝つことでした。勝ったあとの喜び方まで、具体的に思い描いていました。

その時点で、出場や対戦が決まっていたわけではありません。自分がどれほど望んでも、誰と、いつ戦えるかを一人で決めることはできません。

やがて、アーツ選手には別の対戦相手が決まりました。私自身、目標を見直すことを提案しようかと考えた場面もありました。

ところが大山さんは、沖縄で合宿をすると話してくれました。出場が決まったら準備を始めるという順番ではなく、機会が来たときに戦える状態をつくろうとしていたのです。

待っている間にも、自分の側でできることがある

この合宿については、大山さん自身も後年のインタビューで、出場が決まったときのためにコンディションを整えようとした、と振り返っています。

その後、対戦の依頼が届き、年末の舞台でアーツ選手との試合が実現しました。大山さんは、その試合に勝利しています。

結果だけを取り出せば、突然訪れた大きなチャンスの話に見えるかもしれません。しかし、私が振り返りたいのは、その前の時間です。

声がかかるかどうかは、まだ分からない。それでも、自分の状態を整えることはできる。対戦を思い描くだけでなく、そのときに力を出せるよう、日々の行動を選んでいた。

私は当時の大山さんの姿勢を「純粋さ」という言葉で語ってきました。ここで目を向けたいのは、願いの強さだけでなく、目指すものと普段の行動がつながっていたことです。

チャンスを待つ時間は、何もできない時間と同じではない。そのことを、大山さんの姿から考えさせられます。

準備したことと、結果が出たことを分けて考える

この経験は、私にとって大きな出来事でした。ただ、強く思い描けば必ず機会が生まれる、という法則として伝えたいわけではありません。

対戦が実現するまでには、大山さん一人では決められない事情がありました。勝利にも、長く積み重ねてきた技術や練習など、さまざまな条件が関わっています。

一つの結果を、コーチングだけの成果として説明することはできません。準備を続けた人すべてに、同じ結果が訪れるとも限りません。

それでも、機会が来たときに応じられる状態をつくっていた、という点は、仕事にも持ち帰って考えられると思います。

まだ決まっていない仕事に向けて、必要な知識を学んでおく。提案の機会に備えて、相手が何に困っているかを調べておく。任されたときに動けるよう、関係者と話せる状態を整えておく。

こうした準備には、結果が出るまで見えにくいものもあります。だからこそ、機会を得られたかどうかだけで、自分や周囲の努力を評価しない視点も持ちたいものです。

明日、機会が来たら何を提供できるか

大山さんの話を、日常へ戻して考えるとき、一つの問いが浮かびます。

「もし明日、その機会が来たら、今の自分は何を提供できるだろうか」

その問いは、足りないことを責めるためのものではありません。今から手をつけられる準備を、具体的にするための問いです。

たとえば、新しい仕事を任されたいと思っているなら、いま知っておきたいことは何か。協力を頼める相手はいるか。小さく経験しておける場面はないか。「いつかやりたい」を、今日の一つの行動へ近づけてみます。

もちろん、準備のために今の仕事や生活を際限なく削る必要はありません。使える時間や力を見ながら、続けること、やり方を変えること、目標そのものを見直すことも選べます。

機会が来るかどうかを案じる時間の中に、自分の側で整えられるものはないでしょうか。

大山さんの姿を思い出すとき、私は、まだ決まっていない未来に向けて、今日をどう使うかを考えます。

山家が紹介した大山峻護さんの事例

大山さん自身が当時を振り返ったインタビュー(ノマドジャーナル、2016年)

まだ来ていない機会に、どう備えるか

目指す舞台がまだ決まっていなくても、今の自分にできる準備は何でしょうか。初回オリエンテーションでは、仕事や競技で実現したいことと、いま続けている取り組みをお聞かせください。結果への期待と日々の選択を分けて、次に何へ力を注ぎたいかを考える入り口にできます。

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