真剣に話を聞いていたのに、「怒っていますか」と聞かれた。丁寧に説明したつもりなのに、相手の表情が硬くなった。
そんな経験はないでしょうか。
面談や接遇では、本人に悪気がなくても、意図とは違う印象が伝わることがあります。真面目に仕事をしているのに、お客様とのやり取りで誤解が生まれてしまう。言葉遣いを直しても、なぜか同じことが起きる。
私は、そのようなとき、「自分が相手にどのように映っているかを、自分自身が知っているだろうか」と考えます。
「そのつもりだった」と「そう伝わった」は違う

真剣に聞いているつもりでも、眉間に力が入っていれば、不機嫌そうに見えるかもしれません。自然に相槌を打っているつもりでも、タイミングによっては、話を急かしているように感じられることもあります。
もちろん、受け取る側の状況や、それまでの関係によっても印象は変わります。表情だけを見て、その人の気持ちや人柄を決めつけることはできません。
それでも、「私は丁寧に接したつもりです」という説明だけでは、相手が受け取った印象とのずれは分からないままです。
以前、「正しいことを言っているのに、相談されなくなるのはなぜか」で、関わり方が周囲に与える影響について書きました。今回は、その関わり方を自分で確かめる方法を考えてみたいと思います。

自分の姿を、相手の立場から見てみる

私が面談や接遇のトレーニングでお勧めしているのは、ロールプレイングをビデオで撮影し、自分自身の姿を見てみることです。
まずは面談や接遇を模した練習の場をつくります。撮影する人・される人の同意を得て、何のために撮るのか、誰が見るのか、どう管理するのかを明確にしておくことも欠かせません。
映像を見るときには、次のようなところに目を向けてみます。
相手が話している間、自分はどんな表情や姿勢でいるか。
相槌やうなずきは、相手が話しやすいタイミングになっているか。
声のトーンや話す速さ、言葉と言葉の間はどうか。
そして、もう一つ。「この人と話している相手は、どのような気持ちになるだろうか」と、相手の側から眺めてみます。
ここで浮かんだことは、あくまで自分の見立てです。「相手は不快だったはずだ」と結論づけず、練習相手にも、どの場面でどう感じたかを聞いてみるとよいでしょう。
「もっと柔らかい表情で聞いているつもりだった」「思っていたより相槌が少なかった」。他人から指摘されるだけでは受け止めにくかったことも、自分の目で見ると、気づきにつながることがあります。
欠点を探すためではなく、次の関わりを変えるために

私たちコーチも、トレーニングの過程でビデオ撮影を活用してきました。視線の向け方、相槌、身体の力の抜き方、話を聞いているときの表情を確認します。
自分では穏やかなつもりでも、映像では顔がこわばって見える。大きく反応しているつもりでも、ほとんど動いていないように見える。自分が認識している自分と、他者から見える自分の間には、思いのほか違いがあるものです。
だからこそ、映像を使う目的を、社員の欠点探しや一方的な評価にしてほしくありません。大切なのは、本人が自分の関わり方に気づき、変化を選べることだと考えています。
振り返ったあとには、次に試したいことを一つ決めてみてください。相手が話し終わるまで待つ。説明の途中で、相手の反応を確かめる。できていないことをすべて直そうとするより、一つの行動を変えて、もう一度試してみるのです。
私は、人の「品と質」は、こうした日々の所作にも表れると思っています。知識や専門性を持っていることに加えて、目の前の人とどう関わるか。その積み重ねが、安心感や信頼につながっていくのではないでしょうか。
次の面談で、あなたは相手にどのような時間を過ごしてほしいでしょうか。そのときの自分の姿を、一度、相手の側から見てみませんか。
本記事は、山家正尚のFacebook投稿をもとに、具体例と実践の問いを加えて再構成しています。

