急な依頼でも何とかしてくれる人。難しい案件を、最後は一人で片づけられる人。そうして頼られるうちに、自分でも「自分は、問題を解決する側だ」と思うようになる。

得意な仕事があるのは、心強いことです。ただ、その得意を磨くほど、別の役割が選びにくくなる場合もあります。後輩を育てたいと思いながら、つい自分で答えを出してしまうような場面です。

仕事や暮らしを見直す12の視点から今回は、今の自分として上手になることと、自分の役割の捉え方を変えることを考えます。

頑張っても満たされない人へ。仕事・人間関係・毎日の過ごし方を見直す12の視点プロコーチジャパン · 読みもの


もっと速くできることと、違う役割を担えること

一人で問題を解決する仕事が得意なら、知識を増やし、判断を速くすることで、さらに多くの案件を扱えるようになるかもしれません。これは、今の役割の中で力を磨く方向です。

一方、後輩が自分で判断できるように関わるなら、自分が答えを出す速さだけでは測れない仕事が増えます。相手の考えを聞き、任せた結果を待ち、必要なところで支える。その場の処理は遅く見えても、育てたいものが違います。

どちらが上で、どちらが下という話ではありません。ただ、今までの得意をもっと強くするだけでは、新しい役割に必要な関わり方が育たないことがあります。

今のやり方の精度を上げることと、どんな自分として関わるかを選び直すことは、異なる変化です。

この違いが見えないと、育成でも「自分がもっとよい答えを教えればいい」と考え続け、いつまでも自分に質問が集まる状態になるかもしれません。

「自分はこういう人」が、選択の前提になる

自分を「いつでも答えを持っている人」と見ていると、すぐに答えられない場面が、自分らしくない失敗に感じられます。相手に考えてもらう時間まで、何もしていない時間に見えるかもしれません。

でも、自分を「人が考えられる場をつくる人」と捉えるなら、同じ沈黙の意味が変わります。急いで埋めるべき空白ではなく、相手が考えている時間として待てる場合があります。

言葉を変えれば、たちまち行動が変わるということではありません。長く慣れたやり方には、経験や評価との結びつきがあります。頭では役割を変えたいと思っていても、頼られると元の動きに戻ることはあるでしょう。

それでも、何を自分の役割だと思っているかが見えると、行動だけを責める以外の振り返りができます。「また口を出した」で終わらず、何を守ろうとして答えを出したのか、自分の前提に目を向けられます。

目標を高くするだけでは届かない変化に、自分の捉え方が関わっているのです。

過去の強みを捨てずに、使い方を変えられる


役割を選び直すと聞くと、今まで積み上げてきたものを否定するように感じるかもしれません。でも、問題解決の経験は、人を育てる場面でも役に立ちます。

相手がどこで迷いそうかがわかる。必要な情報の不足に気づける。危険な判断の手前で支えられる。自分が全部解決する以外にも、経験を生かす方法はあります。

変わるのは、強みの有無というより、強みを何のために使うかです。自分の速さを証明するために使うのか、相手の力が育つように使うのかで、選ぶ行動が変わります。

ただし、役割には周りとの合意も必要です。組織から即時の処理を求められている場面で、自分だけが育成のつもりになっても、行き違いが生まれます。自分の見方を変えることと、実際の役割や責任を相談することは、両方必要です。

自分の内側だけで完結させず、関わる人と新しい役割を共有していく。その現実的なやり取りも、変化の一部になります。

次の役割は、周囲の期待だけで決めなくていい

得意だから、次も同じ仕事を頼まれる。周囲から見れば自然な流れでも、本人は別の関わり方を育てたいと思っているかもしれません。

反対に、管理する立場を勧められても、本人は専門家として深めたい場合があります。役割を変えること自体が正解なのではありません。今の自分の説明だけで、これからの選択肢を閉じないことが大切です。

「どんな役割なら評価されるか」に加えて、どんな関わり方に自分の喜びを感じるかも、これからを考える材料になります。望みが見えれば、今の役割をより深めるという選択にも、自分の理由を持てます。

人の期待で選んできた人が、自分の喜びから生き方を考え直すプロコーチジャパン · 読みもの

大きな転職や肩書の変更だけが、役割の変化ではありません。同じ職場、同じ担当でも、人への任せ方や、会議で引き受ける役目が変わることがあります。

得意なことは、これからも使える力です。ただ、それだけで今後の自分の形を決めきらなくてよいのです。

もっと上手になる方向と、どんな自分として関わるかを広げる方向。その両方を持つと、成長を努力の量だけで考えずに済むようになります。

今の得意を生かしながら、これからのあり方を考えたい方へ。プロコーチジャパンでは、対話と実践を通じて、自分の生き方を学ぶ講座を用意しています。

自分の見方と、これから担いたい役割を考える